VIAから$49のSoCベースのボードコンピュータが発表されました。
APC
前にこのblogでRaspberry Piを紹介したときも書きましたが、同様のSoCベースのメディアプレーヤのサンプル価格をAribabaなどで調べれば分かる通り、基板のみの価格としてはあまり捻りのない製品とも思います。
また、元がNPOがサポートするFedra/LinuxベースのRaspberry Piと比べると、まだ提供される開発環境やその体制が見えないため、何に使うかと問われれば、明確な利点が見出せません。
Android開発者にとっては、完成品の安価なAndroidタブレットが数多くありますし、
メディアプレーヤ向けの性能を堪能したいなら、同等品のメディアプレーヤの完成品は7000円ですばらしいものが買えますし、AppleTVだって8800円です。
現状では、Linuxでの学習に最適なポジションを得たRasberry PIに比べると、このボードは、若干安価なAndroidターゲットのベアボードとしか映りません。
ただ、VIAがリリースするなら流通に流れるのは早いですね。
OBDNマガジン - OpenBlocks Developers Network Magazine
OBDNプライマルアドバイザ・後藤敏也 Toshiya Goto を責任編集者としてつづる、OpenBlocksやマイクロサーバ、Linux、オープンソースソフトウェアの最新技術やニュース定点観測ブログです。
関連情報に興味を持つ技術者や管理者に、Linux業界第一人者としての視点から見たIT最新情報をお届けします。
OpenBlocks Developers Network はこちら
http://openblocks.plathome.co.jp/support/
2012-05-23
【最新ITトピック】 IPv4がないならIPv6を使えばいいじゃない、って言いますか
いろいろな思惑があるのでしょう。
「日本では壊れたIPv6が広まっている」とGoogle、IPv6接続お断りの方針
問題が解決したと”google"が認めるまで繋がせない、ということなのでしょうが、正直ビジネスサイドからのこういった意見は正しくとも素直には聞けない自分がいます。
IPv6は、本当に地道に作業が続けられ、ビジネスサイドからも、「まだ早い」「いつかはIPv6だけど」と何度もいわれ、そして、ここに来て「ダメ」を出されている、と。
日本のビジネス体質からくる問題でもありますが、IPv6も地デジ移行のように強制的にやってしまってもいいのではないかとも思います。
インターネット属国のままでいいなら別ですが。
「日本では壊れたIPv6が広まっている」とGoogle、IPv6接続お断りの方針
問題が解決したと”google"が認めるまで繋がせない、ということなのでしょうが、正直ビジネスサイドからのこういった意見は正しくとも素直には聞けない自分がいます。
IPv6は、本当に地道に作業が続けられ、ビジネスサイドからも、「まだ早い」「いつかはIPv6だけど」と何度もいわれ、そして、ここに来て「ダメ」を出されている、と。
日本のビジネス体質からくる問題でもありますが、IPv6も地デジ移行のように強制的にやってしまってもいいのではないかとも思います。
インターネット属国のままでいいなら別ですが。
2012-05-17
FreeBSDハンドブックをkindleで
作ってみたら割と便利そうなので、メモを置いておきます。
・なぜKindleか
E-ink端末ですので、バッテリーの持ちが桁違いです。無線オフで約1ヶ月というスペックは、ドキュメントリーダとして、バッテリー寿命を気にすることなく使うことが出来るということです。
また、最新のKindle4は非常にコンパクトです。
・何をどうするのか
HTMLで作られたドキュメントをKindleが食えるmobi形式にします。
今回は、FreeBSDハンドブックを以下のサイトからダウンロードしました。
ftp://ftp.freebsd.org/pub/FreeBSD/doc/ja/books/handbook/
・手順
Kindle Personal Document Serviceもありますが、今回はオフライン作業を行います。
以下のサイトを参考にしてください。
Kindle 電子書籍の作り方まとめ
今回使ったツールはこちら
Mobipocket Creater
ここに解凍したファイルを指定して、変換し、本体に転送するだけで、とりあえず以下の画面までは出るようになります。
(Kindle4まではUSBケーブルにより直接picturesディレクトリ下にコピーします。touchの場合は、メール経由で転送します)
自分で使うだけならこのままでいいかとも思いますが、もう少し体裁を整えて読みやすくするといいかもしれません。
なお、通常のテキストドキュメントに関しては、
ChainLP
というツールにより、テキスト->PDF変換を行っています。
今回OSC名古屋のライトニングトークでも使っていましたが、スピーチの原稿等を入れておくと便利ですね。
・なぜKindleか
E-ink端末ですので、バッテリーの持ちが桁違いです。無線オフで約1ヶ月というスペックは、ドキュメントリーダとして、バッテリー寿命を気にすることなく使うことが出来るということです。
また、最新のKindle4は非常にコンパクトです。
・何をどうするのか
HTMLで作られたドキュメントをKindleが食えるmobi形式にします。
今回は、FreeBSDハンドブックを以下のサイトからダウンロードしました。
ftp://ftp.freebsd.org/pub/FreeBSD/doc/ja/books/handbook/
・手順
Kindle Personal Document Serviceもありますが、今回はオフライン作業を行います。
以下のサイトを参考にしてください。
Kindle 電子書籍の作り方まとめ
今回使ったツールはこちら
Mobipocket Creater
ここに解凍したファイルを指定して、変換し、本体に転送するだけで、とりあえず以下の画面までは出るようになります。
(Kindle4まではUSBケーブルにより直接picturesディレクトリ下にコピーします。touchの場合は、メール経由で転送します)
自分で使うだけならこのままでいいかとも思いますが、もう少し体裁を整えて読みやすくするといいかもしれません。
なお、通常のテキストドキュメントに関しては、
ChainLP
というツールにより、テキスト->PDF変換を行っています。
今回OSC名古屋のライトニングトークでも使っていましたが、スピーチの原稿等を入れておくと便利ですね。
2012-05-16
オープンソースカンファレンス 2012 名古屋
オープンソースカンファレンスは、オープンソースの今を伝えるイベント。
東京だけでなく、北は北海道、南は沖縄まで全国各地で開催しています。
今回の名古屋開催より、当社も協賛、出展に加わることとなりました。
オープンソースカンファレンスの成り立ちを知る方には意外かもしれませんが、今回が初出展となります。
今回の会場は、名古屋国際センターの4F/5F。名古屋駅から地下モールを通じて徒歩7分という交通の便の良い立地です。
当社は、
「OpenBlocksによるマイクロサーバソリューション及びデベロッパネットワークのご紹介」
として、製品展示やEasyblocksのデモを行いました。
また、お昼のライトニングトーク枠で、初参加の挨拶や、当blogを含むOBDNについての成り立ちなどを紹介させて貰いました。初協賛の件に関してもしっかりネタとして使わせていただきました。
当社のブースは、Mozilla Japanさんの隣。
OSC名古屋では、カンファレンス中も展示ブースへの人通りが途絶えることなく、盛況でした。
当社のブースに立ち寄られた方の中には、すでにソリューションのユニットとして検討されている方も多く、また、先の災害の件もあり、省電力や耐環境性能に加え、扱いの手軽なアプライアンスに興味を持っていただいた方も多かったようです。
また、私自身、昔は秋葉原の店舗にいましたので、その頃の話をされる方も多く、OpenBlocksに限らず色々な話をさせていただきました。
次回は6月16日、OSC 2012 北海道となります。
おそらく、今回と同じく単身で乗り込みますので、お手柔らかに。
東京だけでなく、北は北海道、南は沖縄まで全国各地で開催しています。
今回の名古屋開催より、当社も協賛、出展に加わることとなりました。
オープンソースカンファレンスの成り立ちを知る方には意外かもしれませんが、今回が初出展となります。
今回の会場は、名古屋国際センターの4F/5F。名古屋駅から地下モールを通じて徒歩7分という交通の便の良い立地です。
当社は、
「OpenBlocksによるマイクロサーバソリューション及びデベロッパネットワークのご紹介」
として、製品展示やEasyblocksのデモを行いました。
また、お昼のライトニングトーク枠で、初参加の挨拶や、当blogを含むOBDNについての成り立ちなどを紹介させて貰いました。初協賛の件に関してもしっかりネタとして使わせていただきました。
当社のブースは、Mozilla Japanさんの隣。
OSC名古屋では、カンファレンス中も展示ブースへの人通りが途絶えることなく、盛況でした。
当社のブースに立ち寄られた方の中には、すでにソリューションのユニットとして検討されている方も多く、また、先の災害の件もあり、省電力や耐環境性能に加え、扱いの手軽なアプライアンスに興味を持っていただいた方も多かったようです。
また、私自身、昔は秋葉原の店舗にいましたので、その頃の話をされる方も多く、OpenBlocksに限らず色々な話をさせていただきました。
次回は6月16日、OSC 2012 北海道となります。
おそらく、今回と同じく単身で乗り込みますので、お手柔らかに。
2012-05-09
小野秀貴: bindでDNSSECをはじめてみる
◆DNSSECについて
DNSSECとはDNSレコードの改ざんを防ぐためのDNSの拡張です。
DNSリソースを提供するDNS権威サーバでリソースレコードに署名をして、DNSキャッシュサーバで署名を検証することで応答が正しいことを保証するという仕組みです。
JPRS DNSSEC関連情報などでも詳しく解説されています。
ここではドメイン管理者が行う作業という視点でみてみます。
DNSSEC対応するための作業内容は、以下の6つになります。
1. キャッシュサーバのDNSSEC対応
2. KSKの作成
3. ZSKの作成
4. ゾーンの署名
5. 権威サーバのDNSSEC対応
6. DSの上位サーバへの登録依頼
なお、KSK(Key Signing Key)はZSKに署名するための鍵、ZSK(Zone Signing Key)はゾーンのレコードに署名するための鍵です。
またDS(Delegation Signer)はKSK公開鍵から求められる情報です。
実運用時には定期的にKSK,ZSKを更新し再署名、DSの再登録が必要となります。
KSK,ZSKそれぞれについて事前公開法/二重署名法のどちらかを選択して行うなど複雑な作業になります。
また注意深く行わないと最悪すべてのレコードの署名が不正となってしまいます。
今回は更新関連の部分については省略します。
◆パッケージ導入
今回はDNSソフトウェアとしてbindを利用します。bindはすでにDNSSECに対応しているので他に必要なものはありません。
まずはOpenBlockS 600Dにbindを導入します。
インストールされていない場合は以下のようにインストールします。
インストールされたbindのバージョンは9.7.3です。
◆DNSSECの設定
次に設定にうつります。
1. キャッシュサーバのDNSSEC対応
まずはキャッシュサーバのDNSSEC対応を行います。
bindでDNSSEC対応するためには、トラストアンカーを設定する必要があります。
トラストアンカーはルートゾーンのKSK公開鍵情報を含んでいるものが、/etc/bind/bind.keysとしてbind9パッケージで提供されています。
これを利用するには、/etc/bind/named.confに以下の一行を追加します。
実際にjpドメインのsoaを取得して確認してみます。
以上でキャッシュサーバの対応は完了です。
次は権威サーバの設定にうつります。
2. KSKの作成
対象ドメインはexample.jpとして、権威サーバではまずKSKを生成します。
今回は生成された鍵をおく場所を/etc/bind/keysとします。
KSKの生成はdnssec-keygenコマンドで行います。
生成に使用するパラメタは以下にします。
KSKの鍵長: 2048bit
アルゴリズム: RSASHA256 (アルゴリズム番号:8)
前述したように今回は鍵の更新を考慮していません。実際の運用時には有効期日などのタイミング用のオプションを付加して生成する必要があります。
3. ZSKの作成
つぎにZSKを生成します。
ZSKもKSKと同様にdnssec-keygenコマンドで生成します。
生成に使用するパラメタは以下にします。
ZSKの鍵長: 1024bit
アルゴリズム: RSASHA256 (アルゴリズム番号:8)
この時点で/etc/bind/keysにはKSK,ZSKの公開鍵、秘密鍵が格納されています。
次にゾーンファイルへの署名をします。
署名はdnssec-signzoneコマンドで行います。
署名する前のゾーンファイルを/etc/bind/example.jp.zoneとします。
なお署名に使用するパラメタは以下にします。
不在証明の方式: NSEC3
なお、zoneファイルのSOA SERIALはdnssec-signzoneでは自動的にはアップデートはされないのでオリジナルのzoneファイルで事前に更新しておくか-Nオプションで自動更新する必要があります。
5. 権威サーバのDNSSEC対応
bindの読み込むzoneファイルを上記で生成した署名付きのものに変更します。
DNSSEC導入前に/etc/bind/named.conf.local で
つまり上記の署名されたzoneファイルを読み込ませるようにするだけです。
6. DSの上位サーバへの登録依頼
最後に、上位のドメインからの信頼の連鎖を形成するためにDSを登録してもらう必要があります。
さきほどdnssec-signzoneを実行した際に、/etc/bind/dsset-example.jp というファイルが生成されています。
内容を確認すると以下のようになっています。
◆OpenBlockS 600Dでの性能
DNSSEC対応して性能面で問題になる点としては以下が考えられます。
- 署名の性能
- 権威サーバでの応答処理
- キャッシュサーバでの署名検証に要するコスト
OpenBlockS 600Dがどの程度耐えられるか検証してみます。
- 署名の性能
zoneのレコード数が数個であれば問題ありませんがレコード数が増えると署名に要するコストを考える必要があります。
そこで、レコード数を増やしたときの署名に要する時間を測定してみます。
測定方法は、まずexample.jp.zoneファイルに以下の一行を追加します。
結果を以下に示します。
レコード数 署名に要した時間
100 9秒
1000 82秒
10000 798秒
以上のようにほぼレコード数に比例して増えていくようです。
- 権威サーバでの応答処理
権威サーバではDNSSEC使用時の応答に署名(RRSIG)もくっついてきますので多少負荷があがると想定されます。
そこでDNSSEC未使用時/使用時で処理数を比較します。
検証用の権威サーバではダミーのTLD(foo)を作成し、外部にqueryがでないようにしました。
上記署名の検証で用いた10000エントリのデータを使用して、ドメインはexample.jpのかわりにfooとします。
測定は別のIntelマシン(Linux)から行いました。マシンスペックはCore2Duo 2.13GHzです。ネットワーク構成を以下に示します。
検証にはbindに附属のqueryperfというツールを使用しました。queryperfはaptのバイナリではインストールされないため、今回はbind 9.9.0のソースを展開してコンパイルしました。
1. 署名されていないzoneデータを使用、queryperfではDNSSECを使用しない
2. 署名されているzoneデータを使用、queryperfではDNSSECを使用しない
3. 署名されているzoneデータを使用、queryperfではDNSSECを使用
1,2では
1. 587 クエリ/秒
2. 588 クエリ/秒
3. 510 クエリ/秒
DNSSECを使用すると処理できるクエリ数は1割ほど低下するようです。
- キャッシュサーバでの署名検証に要するコスト
最後にキャッシュサーバの処理能力を検証します。
OpenBlockS 600Dをキャッシュサーバとします。権威サーバにはもう一台別のPC(Core2Duo 2.0GHz)を使用します。
ネットワーク構成は以下のようになります。
PC2は権威サーバで設定は前述の検証でのOpenBlockS 600Dの設定と同様にします。
参考までにPC-PC2間でqueryperfを行ったところ8800クエリ/秒の性能でした。
検証は以下の3パターンで行いました。
1. キャッシュサーバでdnssec-validation no、queryperfでDNSSEC無効
2. キャッシュサーバでdnssec-validation yes、queryperfでDNSSEC無効
3. キャッシュサーバでdnssec-validation yes、queryperfでDNSSEC有効
前述の検証と同様にqueryperfを使用しました。なお、キャッシュサーバではそれぞれの検証前にはrndc flushでキャッシュデータの全削除を行いました。
クエリの数は10000以下なので全てのデータはキャッシュサーバのキャッシュに格納されていない状態です。
1. 168 クエリ/秒
2. 106 クエリ/秒
3. 107 クエリ/秒
キャッシュサーバでDNSSECのバリデーションを有効にすると性能が36%程度落ち込む結果になりました。
◆まとめ
bindでDNSSECの設定を行いました。
OpenBlockS 600Dで性能の測定を行い以下の結果となりました。
- 署名の性能はレコード数が少なければ気にならない
- 権威サーバでの応答処理の落ち込みは軽微である
- キャッシュサーバでの署名検証はかなり重い処理である
DNSSECとはDNSレコードの改ざんを防ぐためのDNSの拡張です。
DNSリソースを提供するDNS権威サーバでリソースレコードに署名をして、DNSキャッシュサーバで署名を検証することで応答が正しいことを保証するという仕組みです。
JPRS DNSSEC関連情報などでも詳しく解説されています。
ここではドメイン管理者が行う作業という視点でみてみます。
DNSSEC対応するための作業内容は、以下の6つになります。
1. キャッシュサーバのDNSSEC対応
2. KSKの作成
3. ZSKの作成
4. ゾーンの署名
5. 権威サーバのDNSSEC対応
6. DSの上位サーバへの登録依頼
なお、KSK(Key Signing Key)はZSKに署名するための鍵、ZSK(Zone Signing Key)はゾーンのレコードに署名するための鍵です。
またDS(Delegation Signer)はKSK公開鍵から求められる情報です。
実運用時には定期的にKSK,ZSKを更新し再署名、DSの再登録が必要となります。
KSK,ZSKそれぞれについて事前公開法/二重署名法のどちらかを選択して行うなど複雑な作業になります。
また注意深く行わないと最悪すべてのレコードの署名が不正となってしまいます。
今回は更新関連の部分については省略します。
◆パッケージ導入
今回はDNSソフトウェアとしてbindを利用します。bindはすでにDNSSECに対応しているので他に必要なものはありません。
まずはOpenBlockS 600Dにbindを導入します。
インストールされていない場合は以下のようにインストールします。
# aptitude install bind9 bind9utils dnsutils
◆DNSSECの設定
次に設定にうつります。
1. キャッシュサーバのDNSSEC対応
まずはキャッシュサーバのDNSSEC対応を行います。
bindでDNSSEC対応するためには、トラストアンカーを設定する必要があります。
トラストアンカーはルートゾーンのKSK公開鍵情報を含んでいるものが、/etc/bind/bind.keysとしてbind9パッケージで提供されています。
これを利用するには、/etc/bind/named.confに以下の一行を追加します。
include "/etc/bind/bind.keys";さらにDNSSECの検証を有効にするために/etc/bind/named.conf.optionsにdnssec-validation yes;を追加します。
options {参考までにbind 9.8以降ではdnssec-validation auto;が追加されていてDNSSEC検証ができる状態になっています。
// 省略
dnssec-validation yes;
};
実際にjpドメインのsoaを取得して確認してみます。
# dig +dnssec +m @localhost jp. soastatusがNOERRORでflagsにadが表示されていることからDNSSEC検証が成功したことが確認できました。
; <<>> DiG 9.7.3 <<>> +dnssec +m @localhost jp. soa
; (1 server found)
;; global options: +cmd
;; Got answer:
;; ->>HEADER<<- opcode: QUERY, status: NOERROR, id: 40502
;; flags: qr rd ra ad; QUERY: 1, ANSWER: 2, AUTHORITY: 8, ADDITIONAL: 1
;; OPT PSEUDOSECTION:
; EDNS: version: 0, flags: do; udp: 4096
;; QUESTION SECTION:
;jp. IN SOA
;; ANSWER SECTION:
jp. 86400 IN SOA z.dns.jp. root.dns.jp. (
1335400203 ; serial
3600 ; refresh (1 hour)
900 ; retry (15 minutes)
1814400 ; expire (3 weeks)
900 ; minimum (15 minutes)
)
jp. 86400 IN RRSIG SOA 8 1 86400 20120521174504 (
20120421174504 22584 jp.
a34Q3DmotSpmVl9al8jE2qsbQXl+cyLMyh4F98ILGxL7
gs1K0B2zx5qn7Q+gIUw4YPLWnFi3Los8NGyEb/08QkMO
DEUPTHm4/qQ1Pwq+7F+FYoWkQGcqh3aydsLShMZ4jELZ
BU1KFsLv1hX/v6AKNYft4TDtfg9YLTZU2gRU8Sc= )
;; AUTHORITY SECTION:
以下省略
以上でキャッシュサーバの対応は完了です。
次は権威サーバの設定にうつります。
2. KSKの作成
対象ドメインはexample.jpとして、権威サーバではまずKSKを生成します。
今回は生成された鍵をおく場所を/etc/bind/keysとします。
KSKの生成はdnssec-keygenコマンドで行います。
生成に使用するパラメタは以下にします。
KSKの鍵長: 2048bit
アルゴリズム: RSASHA256 (アルゴリズム番号:8)
# mkdir /etc/bind/keysこれで生成完了です。OpenBlockS 600DでKSKの生成に要した時間は約4秒でした。
# cd /etc/bind/keys
# dnssec-keygen -r /dev/urandom -a RSASHA256 -b 2048 -f KSK example.jp.
Generating key pair....................................+++ .......................+++
Kexample.jp.+008+44380
前述したように今回は鍵の更新を考慮していません。実際の運用時には有効期日などのタイミング用のオプションを付加して生成する必要があります。
3. ZSKの作成
つぎにZSKを生成します。
ZSKもKSKと同様にdnssec-keygenコマンドで生成します。
生成に使用するパラメタは以下にします。
ZSKの鍵長: 1024bit
アルゴリズム: RSASHA256 (アルゴリズム番号:8)
# dnssec-keygen -r /dev/urandom -a RSASHA256 -b 1024 example.jp.生成に要した時間はOpenBlockS 600Dで約1.5秒でした。
Generating key pair...++++++ ..........................................................................................................++++++
Kexample.jp.+008+27015
この時点で/etc/bind/keysにはKSK,ZSKの公開鍵、秘密鍵が格納されています。
# ls4. ゾーンの署名
Kexample.jp.+008+27015.key Kexample.jp.+008+27015.private Kexample.jp.+008+44380.key Kexample.jp.+008+44380.private
次にゾーンファイルへの署名をします。
署名はdnssec-signzoneコマンドで行います。
署名する前のゾーンファイルを/etc/bind/example.jp.zoneとします。
なお署名に使用するパラメタは以下にします。
不在証明の方式: NSEC3
# dnssec-signzone -r /dev/urandom -a -S -3 9999 -K /etc/bind/keys -d /etc/bind -o example.jp. /etc/bind/example.jp.zoneなお、-S(Smart Signing)オプションを利用するとKSKとZSKを探し出して必要な署名をしてくれ、署名後のゾーンファイルは/etc/bind/example.jp.zone.signedというファイル名で保存されます。-3の後の文字はNSEC3用のシードなので適当な数字(16進数)です。
# ls -l example.jp.zone*example.jp.zone.signedの中身を確認すると、RRSIGやDNSKEYなどのレコードが追加されているのが確認できます。
-rw-r--r-- 1 root bind 396 Apr 26 12:25 example.jp.zone
-rw-r--r-- 1 root bind 4593 Apr 26 12:37 example.jp.zone.signed
なお、zoneファイルのSOA SERIALはdnssec-signzoneでは自動的にはアップデートはされないのでオリジナルのzoneファイルで事前に更新しておくか-Nオプションで自動更新する必要があります。
5. 権威サーバのDNSSEC対応
bindの読み込むzoneファイルを上記で生成した署名付きのものに変更します。
DNSSEC導入前に/etc/bind/named.conf.local で
zone "example.jp." {のような設定をしている場合は、以下のように変更します。
type master;
file "/etc/bind/example.jp.zone";
};
zone "example.jp." {さらにDNSSECを有効にするためにoptionsにdnssec-enable yes;の記述が必要ですが、bind 9.7ではデフォルトで有効になっているため記載する必要はありません。
type master;
file "/etc/bind/example.jp.zone.signed";
};
つまり上記の署名されたzoneファイルを読み込ませるようにするだけです。
6. DSの上位サーバへの登録依頼
最後に、上位のドメインからの信頼の連鎖を形成するためにDSを登録してもらう必要があります。
さきほどdnssec-signzoneを実行した際に、/etc/bind/dsset-example.jp というファイルが生成されています。
内容を確認すると以下のようになっています。
example.jp. IN DS 44380 8 1 2713C1E0B7D78AA3E4B8D7455328E258B2DBD8D8これを上位のドメインに登録してもらう必要がありますが、DSの登録に対応/非対応や登録方法などは業者によって異なりますのでここでは省略します。
example.jp. IN DS 44380 8 2 FFC0C009AED9F20F0A7603829D1D402D52BE5112CB47A8F2AC65F7B6 E77E496B
◆OpenBlockS 600Dでの性能
DNSSEC対応して性能面で問題になる点としては以下が考えられます。
- 署名の性能
- 権威サーバでの応答処理
- キャッシュサーバでの署名検証に要するコスト
OpenBlockS 600Dがどの程度耐えられるか検証してみます。
- 署名の性能
zoneのレコード数が数個であれば問題ありませんがレコード数が増えると署名に要するコストを考える必要があります。
そこで、レコード数を増やしたときの署名に要する時間を測定してみます。
測定方法は、まずexample.jp.zoneファイルに以下の一行を追加します。
$INCLUDE /etc/bind/example.jp-sub.zoneexample.jp-sub.zoneファイルを以下のように作成します。このレコード数を100,1000,10000として実験します。
bar-1-1-1 IN A 10.1.1.1dnssec-signzoneコマンドで署名を行い処理に要する時間を測定しました。オプション等は上記のdnssec-signzoneコマンド実行時と同じものを使用しました。
bar-1-1-2 IN A 10.1.1.2
bar-1-1-3 IN A 10.1.1.3
bar-1-1-4 IN A 10.1.1.4
.
.
結果を以下に示します。
レコード数 署名に要した時間
100 9秒
1000 82秒
10000 798秒
以上のようにほぼレコード数に比例して増えていくようです。
- 権威サーバでの応答処理
権威サーバではDNSSEC使用時の応答に署名(RRSIG)もくっついてきますので多少負荷があがると想定されます。
そこでDNSSEC未使用時/使用時で処理数を比較します。
検証用の権威サーバではダミーのTLD(foo)を作成し、外部にqueryがでないようにしました。
上記署名の検証で用いた10000エントリのデータを使用して、ドメインはexample.jpのかわりにfooとします。
測定は別のIntelマシン(Linux)から行いました。マシンスペックはCore2Duo 2.13GHzです。ネットワーク構成を以下に示します。
検証にはbindに附属のqueryperfというツールを使用しました。queryperfはaptのバイナリではインストールされないため、今回はbind 9.9.0のソースを展開してコンパイルしました。
$ cd bind-9.9.0/contrib/queryperfクエリ用のファイルquery.dataを以下のように作成しました。
$ ./configure
$ make
bar-1-1-1.foo. A検証は以下の3パターンで行いました。
bar-1-1-2.foo. A
bar-1-1-3.foo. A
bar-1-1-4.foo. A
.
.
以下略(計10000エントリ)
1. 署名されていないzoneデータを使用、queryperfではDNSSECを使用しない
2. 署名されているzoneデータを使用、queryperfではDNSSECを使用しない
3. 署名されているzoneデータを使用、queryperfではDNSSECを使用
1,2では
3では$ ./queryperf -s 192.168.1.211 -l 10 -d ./query.data
結果は以下のようになりました。$ ./queryperf -D -s 192.168.1.211 -l 10 -d ./query.data
1. 587 クエリ/秒
2. 588 クエリ/秒
3. 510 クエリ/秒
DNSSECを使用すると処理できるクエリ数は1割ほど低下するようです。
- キャッシュサーバでの署名検証に要するコスト
最後にキャッシュサーバの処理能力を検証します。
OpenBlockS 600Dをキャッシュサーバとします。権威サーバにはもう一台別のPC(Core2Duo 2.0GHz)を使用します。
ネットワーク構成は以下のようになります。
PC2は権威サーバで設定は前述の検証でのOpenBlockS 600Dの設定と同様にします。
参考までにPC-PC2間でqueryperfを行ったところ8800クエリ/秒の性能でした。
検証は以下の3パターンで行いました。
1. キャッシュサーバでdnssec-validation no、queryperfでDNSSEC無効
2. キャッシュサーバでdnssec-validation yes、queryperfでDNSSEC無効
3. キャッシュサーバでdnssec-validation yes、queryperfでDNSSEC有効
前述の検証と同様にqueryperfを使用しました。なお、キャッシュサーバではそれぞれの検証前にはrndc flushでキャッシュデータの全削除を行いました。
クエリの数は10000以下なので全てのデータはキャッシュサーバのキャッシュに格納されていない状態です。
1. 168 クエリ/秒
2. 106 クエリ/秒
3. 107 クエリ/秒
キャッシュサーバでDNSSECのバリデーションを有効にすると性能が36%程度落ち込む結果になりました。
◆まとめ
bindでDNSSECの設定を行いました。
OpenBlockS 600Dで性能の測定を行い以下の結果となりました。
- 署名の性能はレコード数が少なければ気にならない
- 権威サーバでの応答処理の落ち込みは軽微である
- キャッシュサーバでの署名検証はかなり重い処理である
2012-05-08
【最新ITトピック】 いまさらのLinuxのクライアント用途についての話
今更ながらのお題が振ってきたので、少しだけコメントを書きたいと思います。
昔この話をコラムに書いたときは、日本語化が、とかプリンタサポートが、という状況でしたので、そういった話は抜きにして。
財経新聞: なぜ Linux はデスクトップ PC 用 OS としては普及しないのか?
日本OSS推進フォーラムのクライアント部会の飯尾さんのコラムにもありますが、この時節、企業はそれほど劇的なシステムの変化を求めないということでしょう。
地方ではそれはより顕著で、OSのサポート切れまで引っ張るのは割と当たり前で、なかなか新規の需要を引っ張れないというのが現状です。
【デスクトップ?何それ、おいしいの?】
とはいえ、結局はExcel問題、少し下がってPowerPoint問題。
あっさりLibre Officeに乗り換えられるならばいいのですが、セキュリティサポートを抜きにすれば、古い資産を使い続けるという判断があるのも当然といえます。
とはいえ、古い資産を抜きにすれば、すでにAndroidなどで十分にクライアントのシェアは掴んでいるわけですから、力点としては間違っていないのでしょう。
昔この話をコラムに書いたときは、日本語化が、とかプリンタサポートが、という状況でしたので、そういった話は抜きにして。
財経新聞: なぜ Linux はデスクトップ PC 用 OS としては普及しないのか?
日本OSS推進フォーラムのクライアント部会の飯尾さんのコラムにもありますが、この時節、企業はそれほど劇的なシステムの変化を求めないということでしょう。
地方ではそれはより顕著で、OSのサポート切れまで引っ張るのは割と当たり前で、なかなか新規の需要を引っ張れないというのが現状です。
【デスクトップ?何それ、おいしいの?】
とはいえ、結局はExcel問題、少し下がってPowerPoint問題。
あっさりLibre Officeに乗り換えられるならばいいのですが、セキュリティサポートを抜きにすれば、古い資産を使い続けるという判断があるのも当然といえます。
とはいえ、古い資産を抜きにすれば、すでにAndroidなどで十分にクライアントのシェアは掴んでいるわけですから、力点としては間違っていないのでしょう。
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