2016-08-26

OpenBlocks IoT シリーズのAzure Event Hubへの接続について


前回、Azure IoT Hubへの接続の手順、および、Stream Analytics jobを経由したPower BIへのデータの受け渡し手順について、解説しました。
今回は、IoT Hubではなく、Event Hubへ接続する方法について簡単に説明します。
なお、全体の流れは前回の作業に沿って行ったものですので、WebUIでのデバイスの登録や、Stream Analytics、PowerBIの設定についての詳細な説明は行いません。




OBDN技術ブログによる動作検証は、該当するデバイスやソフトウェアの動作について、保証およびサポートを行うものではありません。
内容に関するご指摘などありましたら、ブログ記事の担当までご連絡下さい。

<検証環境>
ゲートウェイ
 OpenBlocks IoT BX1 Debian wheezy 7.8 / kernel 3.10.17-poky-edison
 IIJmio 高速モバイル/D SIM
センサー
 FWM8BLZ02A-109047 温度/3軸加速度センサービーコン (BLE)
クラウド
 Microsoft Azure

2.Microsoft Azure Event Hubのデプロイと設定


Azureアカウントにサインインし、新規メニューより、Event Hubを検索します。



Event Hubを選択し、作成を押しすと、旧ポータルへ飛ばされますので、今回はそのまま旧ポータルで作業を行います。
IoTハブ名など、この先でリソース名として受け渡す可能性のあるものには"-"をつけないことをお勧めします。
例えば、Stream Analytics jobのクエリの記述パネルでは"-"は使用できません。

今回の設定例は以下の通り。

イベントハブ名
  obsevhub
リージョン
  東日本

名前空間は自動で入力されます。 obsevhubというハブ名の場合は、obsevhub-nsとなります。

 

作成が終わって以下の画面から、作成したEvent Hub名をクリックします。

 

共有アクセスポリシーを作成します。
今回はtestという名前とし、権限を設定し、画面下部の「保存」を押します。




共有アクセスキー生成コンポーネントにある、ポリシー名、プライマリーキーを、次の項目で説明する、WebUIのSASキーの項目へ入力します。



Event Hubでの定作業は以上で終了です。

3.OpenBlocks IoT 基本ソフトウェアのWebUI設定


設定の全体の流れは前回の記事を参照してください。
作業として異なるのは、Azure IoT Hubへの送信が、Azure Event Hubへの送信となることです。 

・Azure Event Hubへの送信設定


以下のドキュメントに従って設定を進めていきます。

OpenBlocks IoT Family向け データ収集ガイド


先に、送信先設定を行います。
MS Azure IoT Hubを「使用する」にチェックし、各項目を設定してください。

インターバル
 収集したデータを送信する間隔です。
 この例ではデータの送信確認のために5秒としています。
 (実際には5分~1時間以上に設定されることが多いと思います)
有効時間
 データ送信できない場合において、保持する時間を設定します。
 0を指定した場合、データ送信が完了するまで保持し続けます。
ドメイン名
 送信するIoT Hubのホスト名を設定します。
 デフォルトでは、servicebus.windows.net が入力されています。
名前空間
 上記の管理ポータルで作成された名前空間を使用してください。
ポート番号
 送信先のポート番号を設定します。5670となっていますが、5671としてください。

デバイス一括設定
 ビーコン及びデバイスの送信対象設定が”送信する”となっている各対象の
 送信先設定を一括で有効/無効を選択できます。




デバイス情報送信設定を行います。
送信対象を、「送信する」にチェックし、各項目を設定してください。

センサー信号強度[dbm]
 センサーに信号強度を設定できる機種の場合、設定したい信号強度を入力します。
 設定した信号強度が無い場合、近似値またはデフォルト値が設定されます。
取得時間間隔[ms]
 センサーからデータを取得する時間間隔を数字で設定します。単位はmsecです。送信先設定
 送信先をチェックします。同時に2か所までの送信が可能です。
 Event Hubにチェックします。
Event Hub名
 Event Hub名を設定します。今回はobsevhubとなっています。
SASポリシー
 管理ポータルで作成した共有アクセスポリシーの名前を入力します。
SASキー
 管理ポータルで作成された共有アクセス生成キーコンポーネントよりプライマリーキーを
 コピーし、入力します。




保存を押し、収集ログタブにて、Event Hubへデータが送信されていることを確認してください。



4.Stream Analytics jobの設定について


前回との変更点として、入力がIoT HubからEvent Hubになり、リソース名も変わります。
また、サービス名を変更した場合は、クエリのFROMの記述も変更します。

5.Power BIでのデータの確認と表示


Power BIにサインインすると、データセットに設定したデータセット名が表示されています。
以下の画面では、Stream Analyticsでデータセット名を変えていますので、前回と違うデータセットが表示されています。





上記の画面が確認できれば、今回のチュートリアルは終了です。

6.さいごに


今回は、Event Hubへ変更した部分だけを説明しました。
WebUIでのポート番号だけは5671であることをご確認ください。



2016-08-05

OpenBlocks IoT シリーズをMicrosoft Azure IoT Hubへ接続し、Stream Analyticsを経由してPowerBIへデータを受け渡す手順について

OpenBlocks IoT シリーズの基本ソフトウェア 1.0.10より、Azure IoT HubおよびAzure Event HubへのWebUIでの接続設定に対応しました。
本記事では、Azure IoT Hubへの接続の手順、および、Stream Analytics jobを経由したPower BIへのデータの受け渡し手順について、解説しています。




OBDN技術ブログによる動作検証は、該当するデバイスやソフトウェアの動作について、保証およびサポートを行うものではありません。
内容に関するご指摘などありましたら、ブログ記事の担当までご連絡下さい。

<検証環境>
ゲートウェイ
 OpenBlocks IoT BX1 Debian wheezy 7.8 / kernel 3.10.17-poky-edison
 IIJmio 高速モバイル/D SIM
センサー
 FWM8BLZ02A-109047 温度/3軸加速度センサービーコン (BLE)
クラウド
 Microsoft Azure

1. 事前準備


・アカウント

Microsft Azureのアカウントが必要です。
Microsoft Azureのサービスポリシーに従って適切に設定してください。

注意点としてはAzure IoT Hubや、Stream Analyticsなどは個人アカウントでも開始できますが、Power BIを使用する場合は、試用であっても学校または職場のアカウントが必要となり、gmailでの個人登録アカウントなどではサインアップできません。
また、職場のアカウントで無料サインアップ出来ない場合は、職場のMS Azure管理権限のある担当に相談してください。

2.Microsoft Azure IoT Hubのデプロイと設定


 Azureアカウントにサインインします。

 

新規メニューより、IoT Hubを検索します。



IoT Hubを選択し、作成を押し、IoTハブのパネルで名前、サブスクリプション、リソースグループ、場所を入力して、作成を押します。
IoTハブ名など、この先でリソース名として受け渡す可能性のあるものには"-"をつけないことをお勧めします。
例えば、Stream Analytics jobのクエリの記述パネルでは"-"は使用できません。

今回の設定例は以下の通り。

名前:
  obxbx1
価格とスケールティア
  S1 - Standard 400kメッセージ/ユニット/日 ( F1 Freeの場合は8kメッセージ/ユニット/日 )
IoT Hub ユニット
  1
Device-to-cloud パーティション
  4パーティション
サブスクリプション
  Microsoft Azure エンタープライズ
リソースグループ
  plathome-goto
場所
  東日本

ダッシュボードにピン留めする場合は、チェックボックスにチェックを入れます。

 

 デプロイが開始されます。



デプロイ完了を確認します。



3.Device Explorerの導入と設定


以下のドキュメントを参考に、導入と設定を進めていきます。

How to use Device Explorer for IoT Hub device

Getting Device Explorerの項目より、以下のDevice Explorerのダウンロードページを開きます

https://github.com/Azure/azure-iot-sdks/releases


ページの最下部にある、Downloadsより、

SetupDeviceExplorer.msi

をダウンロードし、インストールして下さい。

実行すると、以下のパネルが表示されます。



上記で作成した、Azure IoT Hubより、「すべての設定」から、「共有アクセスポリシー」のパネルを呼び出します。



iothubownerを選択します。



接続文字列ープライマリーキーをコピーします。



コピーした文字列を、Device ExplorerのIoT Hub Connection Stringの入力パネルに貼り付け、Updateを押します。



4.OpenBlocks IoT 基本ソフトウェアのWebUI設定

 
WebUIの初期設定、ネットワーク設定、BLEセンサービーコンの登録


OpenBlocks IoT Family向けWEB UIセットアップガイド

に従って設定してください。
今回は富士通コンポーネントの温度/3軸加速度センサー付きのBLEユニットを使用しています。

出力される項目が変わりますが、標準で対応しているセンサー付きのBLE製品としては、FCL製品以外では、CC2650STK/CC2451 Sensor Tagがあります。
また今後他社製品(ALPS/OMRON/他)にも対応予定ですが、ALPS IoT Smart module開発キット(BLE)は8月中旬以降リリース予定の1.0.11で、それ以外のデバイスは1.0.11より先のリリースで対応を予定しています。
アドバタイズデータにセンサーデータを載せるタイプの製品は、データであれば、ビーコン送信機能で送信可能ですが、送信するJSON上のデータが一連のデータ列のままdataとして名前付けされますので、クラウド側で変換する必要があります。

また、基本ソフトウェアのPD Handlerで標準対応している、EnOceanセンサ、Wi-SUNによるBルートでの電力計測データも利用出来ます。EnOceanセンサは変換モードを有効にすることで多くのアーミンセンサでプロファイルに応じてデータを変換可能ですが、対応していないものは変換前のデータのままrawモードでの送信となりますので、クラウド側で変換が必要となります。

カスタムハンドラを作成される場合は、最終的に扱いたいデータの構造でJSON形式の送信データを構成するといいでしょう。

・Azure IoT Hubへの送信設定


以下のドキュメントに従って設定を進めていきます。

OpenBlocks IoT Family向け データ収集ガイド


先に、送信先設定を行います。
MS Azure IoT Hubを「使用する」にチェックし、各項目を設定してください。

インターバル
 収集したデータを送信する間隔です。
 この例ではデータの送信確認のために5秒としています。
 (実際には5分~1時間以上に設定されることが多いと思います)
有効時間
 データ送信できない場合において、保持する時間を設定します。
 0を指定した場合、データ送信が完了するまで保持し続けます。
ドメイン名
 送信するIoT Hubのホスト名を設定します。
 デフォルトでは、azure-devices.net が入力されています。
ポート番号
 送信先のポート番号を設定します。通常は5671から変更する必要はありません。
IoT Hub名
 上記で設定したIoT Hub名を入力します。

デバイス一括設定
 ビーコン及びデバイスの送信対象設定が”送信する”となっている各対象の
 送信先設定を一括で有効/無効を選択できます。



デバイス情報送信設定を行います。
送信対象を、「送信する」にチェックし、各項目を設定してください。

センサー信号強度[dbm]
 センサーに信号強度を設定できる機種の場合、設定したい信号強度を入力します。
 設定した信号強度が無い場合、近似値またはデフォルト値が設定されます。
取得時間間隔[ms]
 センサーからデータを取得する時間間隔を数字で設定します。単位はmsecです。送信先設定
 送信先をチェックします。同時に2か所までの送信が可能です。
 IoT Hubにチェックします。
デバイスID(IoT Hub)
 デバイスIDを設定します。今回はBLEデバイスのMACアドレスを使用しています。

 上記で設定したIoT Hub名を入力します。
デバイスキー
 IoT Hubに送信する際のデバイスキーを設定します。
 今回デバイスキーは下記の手順によりDevice Explorerで取得しています。

デバイスキーの取得方法

Device Explorerの「Management」タブを開き、「Create」ボタンより入力パネルを出し、上記のWebUIにて使用するデバイスIDを入力して「Create」を押します。



「Device Created」と表示されたパネルの文字列をCtrl-A/Ctrl-Cとしてコピーします。



この文字列に含まれる、PrimaryKeyをデバイスキーとしてWebUIの画面で入力し、設定を保存してください。



5.Device Explorerによる通信確認


先に、WebUIの収集ログにより、pd-handler-stdout.logおよびpd-emitter-lite.logを確認して、センサービーコンとの通信確認、およびAzure IoT Hubとの通信確認を行います。

pd-handler-stdout.logの確認



pd-emitter-lite.logの確認




次に、Device Explorerの「Data」タブより「Monitor」ボタンを押して確認してください。




6.Power BIの準備


Power BIにサインイン出来るように、準備をします。
すでに、お使いの方はこの作業は必要ありません。
以下のページより、サインアップを進めてください。



冒頭に書いた通り、職場または学校のアカウントであれば無料でサインアップできます。
無料の使用範囲は、データ容量1GB/ユーザー、ストリーミングデータが10k行/時間となり、グループでのチームコラボレーションは出来ません。
職場のアカウントでサインアップ出来ない場合は、職場の担当者に相談して下さい。




6.Stream Analytics jobのデプロイと設定


Azureのダッシュボードより、Stream Analytics jobを追加します。
 


 作成を押します。

 

ジョブ名、サブスクリプション、リソースグループ、場所を設定し、作成を押します。
今回の設定例は以下の通りです。

名前:
  streamtobi
サブスクリプション
  Microsoft Azure エンタープライズ
リソースグループ
  plathome-goto
場所
  東日本



デプロイを待ちます。



作成済と表示されたのち、ジョブトポロジを設定します。



入力のパネルをクリックし、、「+追加」を押して設定を行います。



入力のエイリアスを入力し、ソースをIoT Hubにすると、各項目は自動的に設定されますので、問題がなければ作成を押してください。(今回は入力のエイリアスはobxbx1と設定しています)



出力のパネルをクリックし、、「+追加」を押して設定を行います。



出力エイリアスを設定して、シンクのメニューよりPower BIを選択します。
今回は、出力エイリアスはpowerbibx1と設定しています。



接続の承認ボタンを押すと、サインイン画面が出ますので、サインインを行うと承認が終了しますので、データセット名とテーブル名を入力して作成を行います。
今回は、データセット名をfclsensor、テーブル名をsensorとしています。



クエリをクリックして、編集し、保存します。



変換などを行わいない場合は、以下のように入出力のエイリアスを設定するだけです。


SELECT
    *
INTO
    powerbibx1
FROM
    obxbx1



全て設定が終了したら、開始ボタンを押すとストリーミングジョブを開始します。







ストリーミングジョブが正常に開始されました、というメッセージを確認してください。



7.Power BIでのデータの確認と表示


Power BIにサインインすると、データセットに設定したデータセット名が表示されています。




表示されたデータセット名を押すと視覚化のメニューが出ます。



温度と時間を選択し、折れ線グラフを表示させてみます。



上記の画面が確認できれば、今回のチュートリアルは終了です。

8.さいごに


サンプル画面数が非常に多い記事となりましたが、Azureでの作業はデプロイ時間が短いこともあり、作業自体は非常に短時間で終わると思います。

とりあえず、tipsとしては"-"を使わない。これにつきます。

2016-03-30

OpenBlocks IoT Familyをユーザー定義スクリプトと組み合わせて遠隔地へのアクセス手段として利用する

OpenBlocks IoT Family には、モバイル回線での接続が可能なモデルがあります。モバイル回線を使って、遠隔地のアクセス手段にOpenBlocks IoT Familyを利用する方法を紹介します。

OBDN技術ブログによる動作検証は、該当するデバイスやソフトウェアの動作について、保証およびサポートを行うものではありません。
内容に関するご指摘などありましたら、ブログ記事の担当までご連絡下さい。

はじめに


OpenBlocks IoT Family (以下OpenBlcoks)には、モバイル回線の通信機能があります。IoTゲートウェイとしては多くの場合常時ネットワーク接続手段の一つとして利用しますが、 OpenBlocksではモバイル回線の ON / OFF を SMS のメッセージによって制御する機能が用意されています。つまり通常時は通信していない状態にしておき、必要な時だけ回線を接続できるのです。また SMS を使ってあらかじめ設定しておいたシェルスクリプトを動かす機能もあります。これらのSMSによる制御機能を活用して、遠隔地のネットワークへアクセス手段としての OpenBlocks を利用します。

なお SMS を使って OpenBlocks を制御するためには、SMS に対応した SIM を使う必要があります。データ通信のみの SIM では SMS を扱うことはできませんのでご注意下さい。

リモートアクセス


次の図を見て下さい。



このような環境で、遠隔地からメンテナンスなどでサーバーにアクセスしたいというのはシステムの運用ではごく普通の要望です。

OpenBlocks の中身は Debian GNU/Linux のサーバーですので、遠隔地からOpenBlocksへログインできれば、目的のサーバーやネットワーク機器へアクセスできます。このために SSH (Secure Shell)のトンネルを活用してみます。

SSHポートフォワーディング


SSHにはTCPの接続を中継する機能が用意されています。これはポートフォワーディングやトンネリングと呼ばれます。このSSHのTCPの中継機能を例をあげて説明しましょう。

ある会社のオフィス内にWebサーバー HostA があり、インターネット上にシステム運用者がアクセスできるサーバー HostB がある場合を例にします。オフィスには NAT を使ったファイアウォールが用意されていて、オフィス内部からインターネットへは比較的自由にアクセスできるような設定になっています。この場合以下の図のように HostA から HostB へ SSH を経由してログインするのは広く行われています。



ここでインターネット側にある HostB から HostA に SSH でログインしたい場合どうしたら良いのでしょうか。

前述の通り HostA → HostB は特別な設定を行わなくても SSH で接続できるのは明らかですが、HostB → HostA の SSH 接続はファイアウォールがあることと、HostA がプライベート IP アドレスを利用しているため簡単にはできません。ここで利用するのが SSHによるポートフォワーディングです。

次の図を見てください。



この例は HostA から接続する際に、SSH のポートフォワーディングの設定で、HostB のIPv4 ループバックアドレスである 127.0.0.1 のポート番号 10022 を、HostA の IPv4 ループバックアドレスである 127.0.0.1 の ポート番号 22 つまり HostA の SSH サービスへ接続しています。

具体的には HostA から HostB へ SSH 接続する場合に次のように SSH コマンドに -R オプションを指定して起動します。(注:今回 SSH接続のオプションは全てコマンドの引数で指定していますが、これらは SSH の config ファイルで指定できます)

HostA$ ssh -R 10022:127.0.0.1:22 HostB
..........
.....
..........
HostB$ 

SSH で HostA から HostB へログインできたら、前述のポートフォワーディングが設定できています。この状態になれば HostB 側で 次のように IPv4 アドレスで 127.0.0.1 ポート番号 10022 に接続する ssh コマンドを実行すると、HostA へログインできます

HostB$ ssh -p 10022 127.0.0.1
..........
.....
..........
HostA$ 

リモートアクセスのための SSH の設定


SSH ポートフォワーディングを理解できたところで、OpenBlocks を設定してみます。前述の例で HostA が OpenBlocks となります。

まずは OpenBlocks で SSH ログイン認証のための鍵を作ります。機械的なログインに利用するため、パスフレーズは空にします。

root@obsiot:~# ssh-keygen -t ecdsa -N "" -C "Remote Access for BX1"
Generating public/private ecdsa key pair.
Enter file in which to save the key (/root/.ssh/id_ecdsa):
Your identification has been saved in /root/.ssh/id_ecdsa.
Your public key has been saved in /root/.ssh/id_ecdsa.pub.
The key fingerprint is:
13:4d:49:02:63:b6:e5:ac:2b:77:c3:46:bb:d1:63:42 Remote Access for BX1
The key's randomart image is:
+--[ECDSA  256]---+
|      =.o.o.     |
|     o * +.      |
|      . + .      |
|       . .       |
|      . E        |
|       = +       |
|    . o O +      |
|     o o * .     |
|        .        |
+-----------------+
root@obsiot:~#
root@obsiot:~# ls -l .ssh/id_ecdsa*
-rw------- 1 root root 227 Mar 29 11:43 .ssh/id_ecdsa
-rw-r--r-- 1 root root 183 Mar 29 11:43 .ssh/id_ecdsa.pub
root@obsiot:~#

この鍵を HostB との間でログインに使うため、authorized_keys を設定します。

root@obsiot:~# cat .ssh/id_ecdsa.pub  >> .ssh/authorized_keys

またこの鍵のペアを HostB の SSH でログインするユーザー(ここでは tunuser )の ~/.ssh ディレクトリに設定します。

tunuser@HostB$ ls -l .ssh
total 8
-rw-------  1 tunuser wheel  227 Mar 29 11:43 id_ecdsa
-rw-r--r--  1 tunuser wheel  183 Mar 29 11:43 id_ecdsa.pub
tunuser@HostB$ cp .ssh/id_ecdsa.pub .ssh/authorized_keys
tunuser@HostB$ ls -l .ssh
total 12
-rw-r--r--  1 tunuser wheel  183 Mar 29 12:22 authorized_keys
-rw-------  1 tunuser wheel  227 Mar 29 11:43 id_ecdsa
-rw-r--r--  1 tunuser wheel  183 Mar 29 11:43 id_ecdsa.pub
tunuser@HostB$ 

以上が設定できたら OpenBlocks から HostB にログインできるかどうかを確認しみます。この時一緒にポートフォワーディングも指定しています。(注:OpenBlocks をインターネットへ接続した状態で実験しています)

root@obsiot:~# ssh -R 10022:127.0.0.1:22 tunuser@HostB
The authenticity of host 'HostB (XXX.XXX.XXX.XXX)' can't be established.
ECDSA key fingerprint is d5:5e:df:18:bb:69:8e:e7:91:11:f5:d5:ff:3d:90:c4.
Are you sure you want to continue connecting (yes/no)? yes
Warning: Permanently added 'HostB,XXX.XXX.XXX.XXX' (ECDSA) to the list of known hosts.
..........

.....
..........
tunuser@HostB$ 

この通りログインを確認できました。ポートフォワーディングも指定してあるので、HostB 側から OpenBlocks へログインしてみます。(注:OpenBlocks のデフォルトではSSH 接続が閉じているため設定で解放する必要があります)

tunuser@HostB$ ssh -p 10022 root@127.0.0.1
The authenticity of host '[127.0.0.1]:10022 ([127.0.0.1]:10022)' can't be established.
ECDSA key fingerprint is 08:03:4c:2f:35:7b:15:d2:99:b8:42:f5:66:8c:3a:68.
No matching host key fingerprint found in DNS.
Are you sure you want to continue connecting (yes/no)? yes
Warning: Permanently added '[127.0.0.1]:10022' (ECDSA) to the list of known hosts.
Linux obsiot.example.org 3.10.17-poky-edison #1 SMP PREEMPT Fri Mar 11 12:01:23 JST 2016 i686

The programs included with the Debian GNU/Linux system are free software;
the exact distribution terms for each program are described in the
individual files in /usr/share/doc/*/copyright.

Debian GNU/Linux comes with ABSOLUTELY NO WARRANTY, to the extent
permitted by applicable law.
Last login: Tue Mar 29 11:07:29 2016
root@obsiot:~#

この通りポートフォワーディングを使って、インターネットにあるサーバー HostB から OpenBlocks へのログインが確認できました。

OpenBlocks の SMS コントロールコマンド(抜粋)


今回のリモートアクセスで利用するSMSコントロールコマンドを以下に挙げます。


コマンド
コマンドの内容
CON
モバイル回線を接続する
COFF
モバイル回線を切断する
SSHON
SSHを解放する
SSHOFF
SSHを閉鎖する
USCR1F
ユーザー定義のシェルスクリプトの1番をフォアグラウンドで実行する

OpenBlocks に設定した SIM の電話番号へ SMS を使ってこれらのコマンドを送ると、コマンドに応じて OpenBlocks が動作します。また SMS のコントロールコマンドは複数を"+"で接続して 1通の SMS で送ることで、連続した動作を指定できます。

例えば、モバイル回線を接続してユーザー定義シェルスクリプトの1番を実行し、モバイル回線を切断するには次のようなコマンドを送ります。

      CON+USCR1F+COFF

OpenBlocks の設定


SMS 制御でリモートアクセスを行うための OpenBlocks の設定の要点をまとめてみます。

  1. 通常時はモバイル回線は接続せず、回線の ON / OFF は SMS で制御する。
  2. モバイル回線が ON になったら SSH で HostB へ接続してポートフォワーディングを有効にするシェルスクリプトを用意する

まず上記 1 を設定します。これは WEB の設定メニューの「ネットワーク」メニューの「基本」タブの下部にある「サービスネットワーク (モバイル回線)」で設定します。



各項目の設定ポイントは次の通りです。
  • [使用設定]は「使用する」を選んでモバイル回線が利用できるようにします。
  • [APN]、[ユーザー名]、[パスワード]、[認証方式]の項目は利用する SIM に合わせて設定します。
  • [自動接続]は OpenBlocks の起動時にモバイル回線を接続するかどうかを設定するもので、通常時はモバイル回線は OFF にしておくので「自動接続しない」を選びます。
  • [SMSコントーロール]は「有効」を選択し、SMS の制御に使う電話番号を登録します。 OpenBlocks ではセキュリティ面から SMS の制御は、登録した電話番号からのみ受け付けるようになっています。

SSHポートフォワーディングを起動するシェルスクリプト


SSHポートフォワーディングを起動するシェルスクリプトは、[拡張]メニューの[スクリプト編集]のタブで、「ユーザー定義スクリプト1」を選んでから内容を入力します。



シェルスクリプトの内容は次の通りです。

#!/bin/sh

ssh -T -R 10022:127.0.0.1:22 tunuser@HostB sleep 600

この ssh コマンドはシェルスクリプトの中で起動するため、ユーザーのインタラクティブなコマンド操作を受け付ける必要はありません。そこで -T オプションを指定して、HostBでの pty を要求しないように設定しています。

ssh コマンドで HostB に対して「sleep 600」を設定します。これは SSH が 600秒間(つまり10分間)接続し、その後 sleep の終了とともに SSH の接続が終了します。何もしないと 10 分間で接続が切れる設定となります。「え?それじゃ 10分間しか SSH 接続が利用できないの?」という心配の必要はありません。SSH のポートフォワーディングでは、ポートフォワーディングの利用中は SSH 接続が切れることはありません。つまりこのスクリプトが起動してから10分以内にポートフォワーディングの接続を使って、HostB から OpenBlocks へログインすれば、そのポートフォワーディング経由のログインセッションが続いている限りSSH 接続も維持されます。

以上の設定が完了したら、OpenBlocksを一旦再起動します。

リモートアクセスを使ってみる


以上の設定が終わったので、実際に試してみましょう。OpenBlocks の SIM の電話番号に対して次の SMS のメッセージを送ります。

     CON+SSHON+USCR1F+SSHOFF+COFF

意味は、(1)モバイル回線を接続、(2)SSH接続を許可、(3)ユーザー定義シェルスクリプト1を実行、(4)シェルスクリプトの終了後SSH接続を不許可にし、(5)モバイル回線を切断、ということになります。

SMS の送信後 40秒ぐらいで OpenBlocks が HostB に SSH 接続を行います。その状態で HostB から以下のコマンドを実行すれば、OpenBlocks へログインできます。

tunuser@HostB$ ssh -p 10022 root@127.0.0.1

実際に試してみると SSH の接続までに 40秒近くかかるため、SSH 接続が成立したタイミングがはっきりしないという難点があることがわかりました。そこで例えばシェルスクリプトを次のように修正すると、tunuser アカウントのホームディレクトリに 「SSHOK」というファイルがあるか無いかで SSH 接続が成立しているかどうか判断できわかりやすくなります。

#!/bin/sh

ssh -T -R 10022:127.0.0.1:22 tunuser@HostB 'touch SSHOK ; sleep 600 ; rm SSHOK'

この他にもシェルスクリプトを工夫することで、HostB が停止している場合は別の HostC へ接続するなど様々なバリエーションが考えられます。

終わりに


SSH ポートフォワーディングは、ここで紹介したものとは逆向きつまり SSH の接続元から接続先へのポートフォワーディングもできます。ちなみに紹介例の向きのポートフォワーディングをリモートフォワード、逆向きをローカルフォワードと言います。本例での HostB から OpenBlocks へ SSH でログインする場合にもポートフォワーディングを併用できるので、サーバーのリモートデスクトップ接続を外部へ中継することなども可能です。

一昔前でしたらリモートアクセスには電話回線を通じてアナログモデムが使われているのが普通で、サーバーやネットワークのメンテナンスを行う人は必ずモデムを所有していました。しかし今ではモデムを所有している人は少なくなりつつあるどころか、モデムそのものの存在すら知らない人が増えているのも事実です。OpenBlocks のこのような使用例はモデムの代替の一つの解になるのではと思います。